給与所得者の源泉所得税と住民税

地方税

サラリーマンや公務員などの給与所得者の方は、通常、給料から所得税と住民税が天引きされていることと思われます。同じ税金の天引きですが、所得税と住民税の天引きの仕組みは全く違うものです。

所得税の天引き

給料からの所得税の天引きは、源泉徴収制度の仕組みの中で行われています。源泉徴収制度とは、会社など(源泉徴収義務者)が従業員等(納税義務者)の給料を支払う際に、所定の所得税の額を計算して、給料からその金額を天引きして、一定の期日までにその源泉徴収した所得税を国に納付する制度をいいます。

源泉徴収する所得税の金額は、その月の支払金額をベースに計算されます。

会社などの源泉徴収義務者は、原則として、その所得税を徴収した月の翌月10日までに国に納付することになっています。

住民税の天引き

一方、住民税の天引きは、特別徴収制度に基づくものです。住民税の特別徴収制度とは、所得税の納税義務者である会社など(特別徴収義務者)、従業員等(納税義務者)の個人住民税を、支払う給料から天引きし、従業員等に代わって、それぞれの住所地の市町村に納付する制度です。

住民税とは、個人県民税と個人市町村税を合わせた金額で、1月1日の住所地で課税、徴収される税金です。住民税は、前年の所得金額に基づいて計算されます。その金額を6月から次の年の5月までに12等分した金額を、特別徴収義務者が毎月の給料から天引きして、各市町村の納付します。

まとめ

同じように給料から天引きされている所得税と住民税ですが、所得税は国に対して納める税金であり(国税)、住民税は地方公共団体に納める税金(地方税)と、行き先が異なります。

また、同じ月に天引きされているものでも、所得税は、その年の1月1日から12月31日の所得に対して見込みで計算されていますが、住民税は前年の所得金額が計算のベースであるため、両者の金額の決定にはズレがあるのです。

源泉徴収制度も特別徴収制度も、納税義務者にとっては納税の手数が削減されるという点と課税権者(国や地方公共団体)にとっては税金の確実な徴収という点で、合理的な制度と言えるでしょう。しかし、納税義務者である給与所得者にとっては、自身が支払っている税金に対する意識が希薄になりやすいといったデメリットもあります。

6月の給料から天引きされている住民税は、前年(令和2年)分の所得に対して計算された金額になります。5月の給料から天引きされていた住民税は、前々年(令和元年)分の所得に対するものでしたので、人によっては金額が変わっているかもしれません。いつもより少しだけ目を凝らして、給与明細書をながめてみてはいかがでしょうか。