令和3年4月1日以降、税務署や地方自治体に提出する税務書類については、一部の書類を除いて原則、押印が不要となりました。税務書類のみならず、行政手続きや文書の確認、宅配便の受撮りなど、今まで必要だった「はんこ」は不要になりつつあります。
税務書類の提出と押印
そもそも、今回の法改正が施行される前においても、税務書類を電子申告で提出する場合は、申告書自体には、いわゆる押印は不要でした。私が勤務していた税理士法人では、たとえ電子申告をする場合でも、申告内容を確認したという意味合いで、お客様に申告書の該当欄に押印をいただいていましたが。
電子申告ではなく、紙ベースで申告書を提出する場合は、申告書への押印義務がありましたので、お客様に印鑑をご用意していただき、該当箇所に押印していただいていました。法人の申告書ともなると、事業税や法人市民税、税務代理権限証書等も含めると、押印箇所はかなりの数に及び、お客様にとっても負担となる場合がありました。
今は、当然押印なしで申告書の提出をしています。最新の国税庁の法人税別表一からも、従来はあった押印欄は消えています。
「はんこレス」が進みにくいのは内部的な書類?
先日、ある税務関連団体に書類を提出する必要がありました。既定の書類に必要事項を記入の上、郵送するかメール添付で返送してほしいということでしたので、メール添付で提出しました。書類には氏名の横に押印欄があったのですが、とりあえず押印はせずに、メール本文で不備があったら連絡をほしい旨を記載して送信しました。税務書類の提出についても、押印不要となったことだし、押印がわざわざ求められることはないのではという期待をしていました。
ところが、期待を裏切って、この書類には押印をいただくことになっているので、改めて押印したものを送ってほしいとの返信がきました。メール添付の場合は、押印した書類をスキャンして添付して下さいとのことでした。「あら、あら」とは思いましたが、印影を作成して、書類の該当箇所に貼り付けて、改めてメールで提出をしました。その後早速、これで受領できますと連絡がありました。(余談ですが、印影について初めて作成しました。今後も、必要があればこの印影利用しようと思っています。)
今回の書類で押印が必要とされたのは、私本人の意思表示ということを確認することだったと思います。本人確認のためにはんこに代わる措置がある書類なのか、あるいは本当に押印が必要な書類なのかという検討が、まだその組織内部では行われていなかったのではと想像します。
デジタル社会やコロナによるテレワークの増加といった環境の変化が著しい中で、すべての書類にはんこが不要とはならなくとも、今までの慣習ではんこを押していたものについては、組織内部で見直す必要がありそうです。