個人事業主が青色申告を行うためには、取引を複式簿記によって記帳を行い、帳簿を備え付けなければなりません。適正な記帳なしでは、適正な申告はありえないのです。
帳簿とは
帳簿とは、主要簿である「仕訳帳」、「総勘定元帳」及び補助簿である「現金出納帳」、「預金出納帳」、「経費帳」、「売上帳」、「売掛帳」、「買掛帳」などを言います。補助簿は、それぞれの事業者によって、必要なものが違ってきます。すべて現金でやりとりしている事業者(今はレアかもしれませんが)であれば、売掛帳や買掛帳はないでしょう。また、手形決済をしている事業者は「受取手形記入帳」なども必要になってきます。
複式簿記は会計ソフトで
では、実務的に複式簿記の記帳はどのように行うのでしょうか。今は、ほとんど会計ソフトを利用します。現金出納帳、経費帳、預金出納帳(あるいは通帳)、請求書等に基づいて、一定の方法で会計ソフトに入力することによって、複式簿記での記帳ができるようになっています。
ただし、会計ソフトへの入力により、確かに複式簿記での記帳はできるのですが、それが正しい記帳かどうかはまた別の問題です。たとえば、通帳をもとに会計ソフトに取引を入力した結果、通帳の残高と会計ソフト上の残高が一致していなければ、間違った入力をしているということです。また、売上や経費を二重に計上していることもあるかもしれません。入力した内容の検証を正しく、適切に行うことが何より大事なのです。最終的なチェック作業等を税理士等の専門家に任せるにしても、事業主の方は簡単な簿記の知識や会計ソフト上の結果と出納帳の残高を一致させるなどのチェックポイントは、認識しておいた方がいいでしょう。
会計ソフトを利用して正しく記帳すれば、主要簿である仕訳帳や総勘定元帳はできあがります。決算整理仕訳も記帳すれば、申告に必要な貸借対照表や損益計算書も作成できます。
記帳水準の向上をめざして
政府税制調査会でも記帳水準の向上及び適正申告のために、個人の複式簿記による適正な記帳を更に一般化させる方向で議論されています。現在、事業者によって記帳水準にばらつきがあることを鑑みて、水準の高い記帳に対してはインセンティブを検討したり、逆にアバウトな記帳については、恩恵をなくすというような意見も出ているようです。
適正な申告を行うための正しい記帳はもちろんですが、正しい記帳に基づいた結果は、事業者にとっても自身の経営状態を把握するためにも重要なものです。コロナ対応であったような補助金、給付金等の速やかな給付にも正しい記帳は必要です。スモールビジネスの方にとって、記帳は少々負担に感じる部分もあるかもしれませんが、自身の記帳水準の向上を目指しましょう。