電子取引データの保存

所得税

電子帳簿保存法の改正に伴い、令和4年1月1日から電子的に授受した取引情報は、保存要件に従い、データで保存することが義務付けられます。

個人事業主や一人社長法人がどのように対応すればいいか、まとめてみました。

そもそも書類の保存義務とは

所得税法や法人税法では、取引に関して相手方から受領した書類や相手方に交付したこれらの書類の写しの保存義務が定めれています。書類とは、棚卸表、貸借対照表、損益計算書、取引に関係する領収書、請求書、見積書、契約書、納品書などをいいます。これらの書類は、7年間保存しなければなりません(法人について、10年間保存になる場合があります)。

データ保存の対象になる電子取引

以下のような取引が、電子取引に該当します。

  • メールで受領した請求書等(メール添付を含む)
  • インターネットのHPからダウンロードした請求書等
  • HP上に表示される請求書等のスクリーンショットしたもの
  • クラウドサービスを利用して受領した請求書等、
  • スマホアプリ決済による利用明細書、請求書等
  • EDI(電磁データ交換)システムを利用により受領した請求書等
  • 請求書等をDVD等の媒体で受領した請求書等
  • ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機で受領した請求書等

具体的には、Amazonや楽天市場で物品を購入した場合やインターネットを利用しての売買取引は電子取引に該当します。銀行やクレジットカードのウェブ明細も該当します。

具体的な対応策

保存要件には、いくつか選択の余地がありますが、ここでは、個人事業主や一人社長法人が最低限対応しなくてはならないこと及び対応しやすいと思われる方法を紹介したいと思います。改ざん防止のための措置をとる。


1.改ざん防止のための事務処理規定を定める。
これについては、国税庁HPで規定のサンプルがワードで掲載されていますので、これを参考に作成するといいでしょう。

2.データを「日付・取引先・金額」で検索できるようにする。
そのために対象データファイルに規則性をもった名称を付します。
(例)2022年1月5日付け(株)A商店からの150,000円の請求書
   → ファイル名「20210105_(株)A商店_150000」
対象データがそれほど多くなければダウンロードして、すべてPDFにするとわかりやすいと思います。これらのファイルを、年毎や取引先ごとなど検索しやすいフォルダ毎に集約して保管しておきます。

検索機能については、上記の規則性をもったファイル名を付すことによって対応する方法の他、ファイルに連番をふって、別途エクセルで管理する方法もあります。

検索機能については、基準期間の売上高が1,000万円以下の事業者には求められていませんが、最初から上記のような方法で保管すると決めた方が、かえって整理ができいいのではないでしょうか。

3.保存したファイルを見ることができるディプレイやプリンターを備え付けること

1や3については問題ないと思いますが、手間なのは2の対応でしょう。

データ保存義務化まで開始まであと1か月

制度が始まるまで約1か月あります。それまでに、まず自身、自社の取引で電子取引に該当するものがあるかどうか洗い出しておきましょう。パソコンがあって、インターネット環境にあれば、何等かの電子取引に該当するものがあるかと思います。

ひとつ間違ってはいけないのは、データ保存すべきものは電子取引に関するものだけです。紙で授受した領収書等をスキャンして保存して、紙の領収書は廃棄してもいいのかと勘違いしてしまいそうですが、これはまた、スキャナ保存の要件がありますので、紙で授受したものは、そのまま紙で保管しておくということを忘れずに。