所得税法と健康保険法の被扶養者

仕事周り

税理士業は税務を取り扱う仕事ですが、その過程で、お客様から度々社会保険についてもお尋ねをいただくことがあります。確定申告の結果が、社会保険に影響を及ぼすことがありますので、その部分も含めて、わかる範囲でご説明するようにはしています。とはいえ、社会保険については専門家ではありませんので、ざっくりとは知っていても、当然知らないことも多々あります。今回の話もそんなケース。

収入が130万円超えそうなんだけど、社会保険の被扶養者になれるの?

知り合いから受けた質問。彼女は、今まで年間収入が130万円未満でしたので、社会保険については協会けんぽの被保険者であるご主人の被扶養者でした。ところが、時給が上がることになり、どうも来年は収入が130万円を超えそうだとのこと。もう被扶養者にはなれないのかと思い、協会けんぽの規定を読んでみたら、以下のような記載があるので、もしかしたら私は引き続き、被扶養者でいられるのかしらとのことでした。

「認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。」

彼女は年齢が62歳。この内容の通りとすると被扶養者の収入基準は130万円未満ではなく、180万円未満になるので、引き続き被扶養者でいられるということです。私も、社会保険の被扶養者の収入基準は130万円未満という認識でしたので、早速、社会保険労務士に確認してみました。

社会保険労務士の方には、あっさり「その通りなんですよ」と言われました。つまり、60歳以上になると、社会保険の被扶養者の収入基準が180万円にアップするということです。これは、健康保険法及び厚労省の通知によって決まっているとのことです。

そうなんですね。お恥ずかしい話、知りませんでした!

所得税とは違う社会保険の収入

ところで、所得税と健康保険については、考え方が違う点が多くあります。この被扶養者の要件である収入の範囲についてもその一つです。

所得税法上、扶養親族の判定に用いられる収入、所得には、障害年金や遺族年金、通勤手当のように非課税のものは含まれません。一方、不動産売却や株式の売却のような臨時収入は含まれます。

健康保険法上の社会保険の被扶養者の判定基準である収入には、所得税の課税・非課税を問わず、継続して得られるものすべての収入が含まれますので、通勤手当や障害年金や遺族年金、雇用保険の給付金等は、全て収入の範囲になります。一方、不動産売却益のような臨時収入は、収入に含まれません。

実務的に一番注意するのは、通勤手当ではないでしょうか。社会保険の調査で、収入の判定に通勤手当を含まず被扶養者の判定を行っているケースについて、時々指摘を受けることがあるとのことです。

所得税と社会保険を混同していらっしゃる方も時々お見受けします。今回の話は、一つのエピソードですが、両者の違いを認識していただくお役に立てば・・・。