個人事業主がお亡くなりになったら

個人事業主

時節柄、喪中はがきが1枚また1枚と届いています。先日届いたのは、ここ10年近く闘病をなさっていた方のご遺族からの喪中はがき。お亡くなりになった方は、まだ60代と若く、頻繁に会う方ではなかったものの、要所々々で心に残る言葉を伝えてくださった方で、ご遺族と電話で話しているうちに、胸がいっぱいになってしまいました。

職業柄、仕事上のお付き合いがある方ご本人やそのご家族が亡くなるという場面に度々向き合わなくてはなりません。亡くなった方が事業を営んでいる個人事業主であった場合、その死亡に伴って提出しなくてはならない届出がいくつかあります。また、その事業を相続人の方が引き継ぐ場合には、その引継ぎ(開業)に伴う届出を提出する必要があります。

個人事業主の死亡に伴う手続き

個人事業主の方がお亡くなりになった場合、事業に関する税務的には、基本的に以下の届出が必要になります。

1.個人事業の廃業等届出書(全個人事業主)・・・ 亡くなってから1か月以内
2.所得税の青色申告取りやめ届出書(青色申告をしていた個人事業主)
  ・・・青色申告をやめようとする年の翌年3月15日まで
3.給与支払事務所等の廃止届出書(従業員がいて与を支払っていた個人事業主)
  ・・・事業廃止から1か月以内
4.個人事主の死亡届出書及び事業廃止届出書(消費税課税事業者)・・・速やかに
  *消費税に関しては、その個人事業主の消費税に関する届出状況に応じて、提出する届出書が増え 
   る場合があります。

廃業等届出書の都道府県や市町村への届出については、基本的に税務署に提出しておけば、神奈川県内は、県税事務所や市町村に通知が届くようなのですが、自治体によって対応が違うもしれないので、確認が必要です。

また、所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書が必要になるケースもあります。

新たに事業を引き継ぐ方の手続き

それまで事業を行っていなかった相続人の方が、亡くなった方の事業を引き継ぐ場合には、必要に応じて、以下のような手続きが必要になります。基本的には個人事業主の開業の手続きと同じなのですが、青色申告承認申請書については提出期限が異なってきますので、要注意です。

1.個人事業の開業届出書・・・事業の開始から1か月以内
2.所得税の青色申告承認申請書
  青色申告の承認を受けていた被相続人の事業を相続により承継した場合は、死亡の日に応じて、
  それぞれ次の期間内に提出。 
① その死亡の日がその年の1月1日から8月31日までの場合・・・死亡の日から4か月以内
② その死亡の日がその年の9月1日から10月31日までの場合・・・その年の12月31日まで
③  その死亡の日がその年の11月1日から12月31日までの場合・・・その年の翌年の2月15日まで

3.給与支払い事務所等の開設届出書
4.源泉所得税の納期の特例の承認
5.青色専従者の給与に関する届出書

消費税に関しては、被相続人の状況によって提出する届出書等が異なってきます。

お気持ちをいたわりつつ、、、

事業を営んでいた方がお亡くなりになると、相続人の方も心身ともにお疲れになっていらっしゃる上に、上記のような税務に関する手続きが必要になり、ご負担になることは想像に難くありません。開廃業届出書などは、お亡くなりになって1か月以内の提出ということですので、非常に慌ただしいです。

以前、12月末に亡くなったお客様がいらっしゃって、年が明けてしばらくしてから、親族の方に届出書等のお話をさせていただいたところ、悪気なく「まだ四十九日も終わっていないのに、、、」とおっしゃっていました。タイミング的に、それどころではないという心中はお察しでき、仕事とは言え、何とも重い気持ちになりました。

なかなか前もって準備をしておくことのできない手続きですが、少しでもお客様の負担を軽減するような形で、お手伝いができればいいなと思います。